弟矢 ―四神剣伝説―
「何処で抜かれたんだ? なんで一矢が先に着いてんだよ。鬼になってまで……馬鹿にも程があるだろ」
小声で一矢の悪態をつきながら、乙矢は弓月に近づいた。
乙矢は哀しみに震える声を必死で抑える。そして、頚部から神剣を抜かれ、地面に転がる一矢を見た瞬間――乙矢は唇の内側を歯で噛み切った。
硫黄の匂いを打ち消すように、錆びた鉄の匂いが辺りを覆いつくす。そんな中、口に流れ込む血の味と共に、乙矢は涙を飲み込んだ。
「弓月殿――絶対に、一矢には近づくな。下がってろよ」
「……はい」
乙矢は渾身の力で地面を踏み締めた。
抜刀せず、『白虎』に左手を添え、鯉口(こいくち)を切る。宗次朗を正面から捉え、乙矢は浅く息を吐いた。
しかし、乙矢が呼吸を整える前に、宗次朗は乙矢の喉元を狙って飛び込んだ。
気力でここまで来た乙矢だが、長くは持たない。
鞘離れの一刀で決めようとしたが……。
宗次朗相手ではそう簡単にはいかなかった。
小声で一矢の悪態をつきながら、乙矢は弓月に近づいた。
乙矢は哀しみに震える声を必死で抑える。そして、頚部から神剣を抜かれ、地面に転がる一矢を見た瞬間――乙矢は唇の内側を歯で噛み切った。
硫黄の匂いを打ち消すように、錆びた鉄の匂いが辺りを覆いつくす。そんな中、口に流れ込む血の味と共に、乙矢は涙を飲み込んだ。
「弓月殿――絶対に、一矢には近づくな。下がってろよ」
「……はい」
乙矢は渾身の力で地面を踏み締めた。
抜刀せず、『白虎』に左手を添え、鯉口(こいくち)を切る。宗次朗を正面から捉え、乙矢は浅く息を吐いた。
しかし、乙矢が呼吸を整える前に、宗次朗は乙矢の喉元を狙って飛び込んだ。
気力でここまで来た乙矢だが、長くは持たない。
鞘離れの一刀で決めようとしたが……。
宗次朗相手ではそう簡単にはいかなかった。