弟矢 ―四神剣伝説―
「弓月殿……東国は今、どうなってんのかな?」


布団を上げ、部屋の中央に向かい合って座った。そして、最初に東国のことを言われ、弓月は声を詰まらせる。


「そ、それは……しかし、凪先生は動けませんし、それに乙矢殿が」

「弥太が残るって言ってんだろ? 先生は罪人じゃないんだ、津山のお殿様がちゃんと見てくれるさ」

「では乙矢殿はどうなります? 万一の時に誰があなたの味方をするのです!?」


弓月にはそれが不安でならなかった。

一矢の代わりに乙矢に切腹の沙汰が下りたら……乙矢なら従うだろう。でも、それは余りにも理不尽だ。

弓月にはどうあっても黙って見過ごすことはできなかった。


「私は……万にひとつも乙矢殿が罰せられると言うなら、どんなことをしても、あなたをお守り致します!」

「ゆ、弓月殿」


弓月の気迫に乙矢は押され気味だ。弓月は更に、障子の外を指差しながら声高に叫んだ。


「見張りの兵など……これではまるで、乙矢殿を罪人扱いしているではありませんか!? 神剣を巡る争いに、乙矢殿は巻き込まれただけです。『白虎』に選ばれ、渦中に引き摺り込まれた責任を、乙矢殿が取る必要はございません!」


半泣きの弓月に、乙矢はいつもと変わらぬ笑顔を見せた。


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