弟矢 ―四神剣伝説―
――四種五本の神剣を揃えたら、全て炉に放り込み、神剣をこの世から消し去りたい。
そう、乙矢は幕府に言上(ごんじょう)したのだ。
決定は下ってないが、乙矢は本気である。二度と同じ悲しみを生まないために……己の身を危険に晒しても、やり遂げるつもりだった。
「神様が、民を守れって勇者を選んで神剣を遣わしたんだろ? だったら、いらない時は返そうぜ。本当に必要になったら、きっとまた勇者と共に現れるさ。――遠い未来にな」
「ま、お前がそう言うんなら、俺は構わんが」
ふたりが遊馬の領地に入り、小高い丘に差し掛かった時だ。遠くに人影らしきものが見える。街道沿いの木々は紅葉を見せつつあるのに、そこだけ桜色に染まっていた。
「弓月殿だ!」
「お前……どういう目をしてるんだ!? まだ一町はあるぞ。あれが弓月様とは……おいっ!」
止める間もなく乙矢は走り出す。
乙矢の背は小さくなり、やがて桜色と重なった。
そして――神剣を手に戦う勇者は、再び伝説となる。
(完)
そう、乙矢は幕府に言上(ごんじょう)したのだ。
決定は下ってないが、乙矢は本気である。二度と同じ悲しみを生まないために……己の身を危険に晒しても、やり遂げるつもりだった。
「神様が、民を守れって勇者を選んで神剣を遣わしたんだろ? だったら、いらない時は返そうぜ。本当に必要になったら、きっとまた勇者と共に現れるさ。――遠い未来にな」
「ま、お前がそう言うんなら、俺は構わんが」
ふたりが遊馬の領地に入り、小高い丘に差し掛かった時だ。遠くに人影らしきものが見える。街道沿いの木々は紅葉を見せつつあるのに、そこだけ桜色に染まっていた。
「弓月殿だ!」
「お前……どういう目をしてるんだ!? まだ一町はあるぞ。あれが弓月様とは……おいっ!」
止める間もなく乙矢は走り出す。
乙矢の背は小さくなり、やがて桜色と重なった。
そして――神剣を手に戦う勇者は、再び伝説となる。
(完)