弟矢 ―四神剣伝説―
「おゆき殿と申されましたね。信じて頂けぬかもしれぬが、我らは謀反など起こしてはいません。乙矢殿とは、浅からぬ縁があり、彼はここに留まる訳にはいかぬのです。身の安全は我らが保証いたします。どうぞ、お引取りを」
言葉遣いは丁寧だが、弓月らしからぬ押しの強さがあった。
まるで、乙矢の女房同然に振舞うおゆきに、嫉妬しているようにも見える。
「と、とにかく。弓月殿たちは反乱軍とかじゃないんだ。俺も、色々事情があって、行かなきゃならないんだよ。な、おゆき、お前は宿場に帰れ。今の俺には何にもしてやれねえしさ……」
その時、おゆきは何を思ったのか、髪に挿したかんざしをスッと抜いた。
(かんざしなんか、挿してたっけ?)
――その動作は、乙矢の意識に何処か引っ掛かる。
「乙矢さんを返して貰うよ! 力ずくでもね!」
そう叫びながら、おゆきはなんと、弓月に飛び掛って行った。
言葉遣いは丁寧だが、弓月らしからぬ押しの強さがあった。
まるで、乙矢の女房同然に振舞うおゆきに、嫉妬しているようにも見える。
「と、とにかく。弓月殿たちは反乱軍とかじゃないんだ。俺も、色々事情があって、行かなきゃならないんだよ。な、おゆき、お前は宿場に帰れ。今の俺には何にもしてやれねえしさ……」
その時、おゆきは何を思ったのか、髪に挿したかんざしをスッと抜いた。
(かんざしなんか、挿してたっけ?)
――その動作は、乙矢の意識に何処か引っ掛かる。
「乙矢さんを返して貰うよ! 力ずくでもね!」
そう叫びながら、おゆきはなんと、弓月に飛び掛って行った。