弟矢 ―四神剣伝説―
「乙矢殿っ!」
目の前で崩れ落ちる乙矢に、弓月は駆け寄り支えた。
「毒か! この女、ただの女郎ではなさそうだ。蚩尤軍の手先か」
「あ、あたしはただ……これで弓月って呼ばれてる女を殺せば、乙矢さんの罪をなかったことにしてくれる、って」
カチャッと刀の鍔を押す音が聞こえた。
女を斬るなど名折れだ、などと言ってる場合ではない。新蔵が刀を抜こうとしたその腕に、瀕死の乙矢が飛びついた。
「なっ!?」
「やめ……たのむ。斬るな……」
「お前、何を言ってるのかわかってるのか? この女はお前を、いや、弓月様を狙って」
「たのむ。殺す、な。おゆき……戻ったら、殺されるぞ。……逃げろ。逃げて……」
「動いては駄目です、乙矢殿! 毒が早く回ります。凪先生、早く、乙矢殿を!」
弓月は乙矢を抱き止め、押さえつけた。
(――弓月殿の腕の中で死ねるなら、悪くない幕引きだ)
そんな考えが浮かんだ直後、乙矢の意識は暗闇に堕ちた。
目の前で崩れ落ちる乙矢に、弓月は駆け寄り支えた。
「毒か! この女、ただの女郎ではなさそうだ。蚩尤軍の手先か」
「あ、あたしはただ……これで弓月って呼ばれてる女を殺せば、乙矢さんの罪をなかったことにしてくれる、って」
カチャッと刀の鍔を押す音が聞こえた。
女を斬るなど名折れだ、などと言ってる場合ではない。新蔵が刀を抜こうとしたその腕に、瀕死の乙矢が飛びついた。
「なっ!?」
「やめ……たのむ。斬るな……」
「お前、何を言ってるのかわかってるのか? この女はお前を、いや、弓月様を狙って」
「たのむ。殺す、な。おゆき……戻ったら、殺されるぞ。……逃げろ。逃げて……」
「動いては駄目です、乙矢殿! 毒が早く回ります。凪先生、早く、乙矢殿を!」
弓月は乙矢を抱き止め、押さえつけた。
(――弓月殿の腕の中で死ねるなら、悪くない幕引きだ)
そんな考えが浮かんだ直後、乙矢の意識は暗闇に堕ちた。