弟矢 ―四神剣伝説―
「はっ。申し訳ございません。しかし、乙矢であるならともかく、かの爾志一矢となれば、無闇に戦いを挑む訳にも行かず」
「武藤、遊馬の小娘が『青龍二の剣』を所持していることはわかっていたはずだ。何ゆえ『鬼』を連れて行かぬ」
「そ、それは、私もそう思い、狩野様に『青龍一の剣』と共に援軍を願い出ましたが……」
「東国の領地内ならともかく、地の利もない奴らに、まさか武藤殿が負けるとは思いませんでした」
「負けてなどおらぬ! 無用な戦いを避け、一矢の件を報告に参ったまでのことだ!」
狩野の挑発に、易々と乗る武藤を溜息と共に見下ろす。
「爾志一矢、か。奴は死んだはずだ。その者は、愚弟の乙矢であろう」
「しかし、閣下!」
乙矢にあれほどの剣技はないはずだ、と言い募ろうとしたが……仮面の向こうに光る、冷ややかな眼差しが、武藤の反論を封じた。
「だが、奴は一矢の双子の弟。腐っても勇者の血統に違いはない。『青龍二の剣』が奴らの手元にあるのも事実。よかろう『青龍一の剣』を持ち出すがいい。始末に困らぬように、鬼になる者は若く体力があり、且つ、剣の腕の立たぬ者を選ぶよう。下手に上級者を選べば、己の首を掻き切られることになるぞ」
「はっ。ありがたき幸せ」
武藤は深々と頭を下げた。
「武藤、遊馬の小娘が『青龍二の剣』を所持していることはわかっていたはずだ。何ゆえ『鬼』を連れて行かぬ」
「そ、それは、私もそう思い、狩野様に『青龍一の剣』と共に援軍を願い出ましたが……」
「東国の領地内ならともかく、地の利もない奴らに、まさか武藤殿が負けるとは思いませんでした」
「負けてなどおらぬ! 無用な戦いを避け、一矢の件を報告に参ったまでのことだ!」
狩野の挑発に、易々と乗る武藤を溜息と共に見下ろす。
「爾志一矢、か。奴は死んだはずだ。その者は、愚弟の乙矢であろう」
「しかし、閣下!」
乙矢にあれほどの剣技はないはずだ、と言い募ろうとしたが……仮面の向こうに光る、冷ややかな眼差しが、武藤の反論を封じた。
「だが、奴は一矢の双子の弟。腐っても勇者の血統に違いはない。『青龍二の剣』が奴らの手元にあるのも事実。よかろう『青龍一の剣』を持ち出すがいい。始末に困らぬように、鬼になる者は若く体力があり、且つ、剣の腕の立たぬ者を選ぶよう。下手に上級者を選べば、己の首を掻き切られることになるぞ」
「はっ。ありがたき幸せ」
武藤は深々と頭を下げた。