弟矢 ―四神剣伝説―
「弓月殿っ! 悪い。無神経だった、俺が」
「違うのです。私が……私は」
弓月は言葉にならず、逃げるように部屋を飛び出して行く。
乙矢は、後を追うべく立ち上がるが……。
さすがに、この七日間というもの死線を彷徨い、ようやく目覚めた体では、膝が笑って歩くこともままならない。今の乙矢は、まるで生まれたばかりの子馬のようだった。
どうにか廂に辿り着くと、そこに飛び込んできた新蔵に、乙矢は胸倉を捉まれた。
「貴っ様ぁ! 弓月様に何をしたっ!」
「何って、何ができるって言うんだ、この体で」
ようよう答えたが、全く聞いてない。
「あの弓月様が……泣いておられたのだぞ。何を言ったのだ! こととしだいによっては、この場で引導を渡してやる!」
逆上する新蔵に乙矢が投げかけた言葉は、
「なあ……お前って、弓月殿に惚れてるのか?」
意表を突かれたらしく、新蔵は面食らってアタフタとしている。
「な、な、な……何を馬鹿な! そ、そ、そんなこと……弓月様には、い、許婚が」
「お前が本当に殺したいのは俺じゃなくて、一矢なんじゃねぇの?」
「ばっ、馬鹿野郎!! 俺がいつそんなっ」
「違うのです。私が……私は」
弓月は言葉にならず、逃げるように部屋を飛び出して行く。
乙矢は、後を追うべく立ち上がるが……。
さすがに、この七日間というもの死線を彷徨い、ようやく目覚めた体では、膝が笑って歩くこともままならない。今の乙矢は、まるで生まれたばかりの子馬のようだった。
どうにか廂に辿り着くと、そこに飛び込んできた新蔵に、乙矢は胸倉を捉まれた。
「貴っ様ぁ! 弓月様に何をしたっ!」
「何って、何ができるって言うんだ、この体で」
ようよう答えたが、全く聞いてない。
「あの弓月様が……泣いておられたのだぞ。何を言ったのだ! こととしだいによっては、この場で引導を渡してやる!」
逆上する新蔵に乙矢が投げかけた言葉は、
「なあ……お前って、弓月殿に惚れてるのか?」
意表を突かれたらしく、新蔵は面食らってアタフタとしている。
「な、な、な……何を馬鹿な! そ、そ、そんなこと……弓月様には、い、許婚が」
「お前が本当に殺したいのは俺じゃなくて、一矢なんじゃねぇの?」
「ばっ、馬鹿野郎!! 俺がいつそんなっ」