弟矢 ―四神剣伝説―
乙矢は苦しげに壁に寄りかかった。所々穴の開いた壁は重みに耐えかねて、今にも倒れそうだ。長瀬はそんな乙矢に刀を一本放り投げた。
飛んでくるそれを、条件反射で受け取ってしまい……咄嗟に動かした二の腕に、突き刺すような痛みが走る。
「道中、一本調達した。おぬしはそれを使え」
「ちょ、待て……使えったって、自慢じゃないが、俺は刀を差した事がない!」
「確かに、自慢にはならぬな」
長瀬は完全に呆れたような声だ。
「こんなもん持ってたって、俺には」
「我らは、姫と『青龍二の剣』を守るため、一門が死に絶えても、罪人と呼ばれても、こうして生き恥を晒しておる。おぬしを守る余裕などないのだ。わかるな」
「別に守ってくれなんて」
「頼まれずとも、姫は、おぬしを守ろうとするだろう。二度までも、命を救われた恩義を感じておられる。だが、おぬしは姫が自分の盾となり死んでも後悔はせぬか?」
長瀬の問いに乙矢は唇をかみ締める。
「兄の許婚なれば、おぬしが姫を守って当然と思うが……命令とあらば逆らえぬ。よいか、おぬしはそれを腰に差せ! そして自らの意思で抜き、敵を殺せ! 転がる死体が敵であれ、おぬしであれ、我らは一向に構わぬ」
あまりに辛辣な長瀬の物言いに、乙矢は痛みも忘れ、呆然と立ち竦んでいた。
飛んでくるそれを、条件反射で受け取ってしまい……咄嗟に動かした二の腕に、突き刺すような痛みが走る。
「道中、一本調達した。おぬしはそれを使え」
「ちょ、待て……使えったって、自慢じゃないが、俺は刀を差した事がない!」
「確かに、自慢にはならぬな」
長瀬は完全に呆れたような声だ。
「こんなもん持ってたって、俺には」
「我らは、姫と『青龍二の剣』を守るため、一門が死に絶えても、罪人と呼ばれても、こうして生き恥を晒しておる。おぬしを守る余裕などないのだ。わかるな」
「別に守ってくれなんて」
「頼まれずとも、姫は、おぬしを守ろうとするだろう。二度までも、命を救われた恩義を感じておられる。だが、おぬしは姫が自分の盾となり死んでも後悔はせぬか?」
長瀬の問いに乙矢は唇をかみ締める。
「兄の許婚なれば、おぬしが姫を守って当然と思うが……命令とあらば逆らえぬ。よいか、おぬしはそれを腰に差せ! そして自らの意思で抜き、敵を殺せ! 転がる死体が敵であれ、おぬしであれ、我らは一向に構わぬ」
あまりに辛辣な長瀬の物言いに、乙矢は痛みも忘れ、呆然と立ち竦んでいた。