そして彼女にキスをする
いきなり殴られた。
後はもう覚えていない。
ケンカしたのか、一方的に殴られたのか。
とにかく体中が痛い。
顔もどっか切ったみたいだ。
ヒヤリとした冷たい感覚。
「“海”…。」
「あの…、大丈夫ですか?」
「あれ…。」
見知らぬ女がいる。
「あの…、ここに女の人、居ませんでした?髪の長い…。」
「いえ、あの…男の人といかれましたけど…。」
“海”…、また行ってしまった…。
もう逢えないかもしれないのに…。
「あの…。」
「あ、どうもありがとうございました。」
起き上がろうとすると
「いってっ…。」
「あ、もう少し休んでた方がいいですよ。今バンソーコーが来ますから。」
「え…。」
「あ、起きた?バンソーコーと傷薬買ってきたよ。」
「遅いよ、もう。何処まで行ってたのかと思った。近くにお店なかったんだ。」
「ゴメン。ちょっと見つからなくてさ、時間かかっちゃった。」
二人は、随分仲が良いみたいだ。
僕と“海”もこんなふうだったよかったのに…。
「ヒドいことされたね。あの男の人知り合い?」
「いえ、知り合いなのは女の方で…。」
「そう。大変だったね。女の人も無理やり連れられている感じだったし…。ね。」
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