そして彼女にキスをする
「そうだね。心配そうにこっち見てたけど、行っちゃったしね。」
“海”が僕を心配?あの“海”が?
「ありがとうございました。それでどっちに行きました?」
「それは右の方に行ったけど…。ねぇ、止めたほうが良いよ。また殴られるだけだよ。」
「そうだよ。今の自分でも分かるだろ?少なくても君のかなう相手じゃないよ。」
でも行かなきゃ。
今探さなきゃまた逢えない。
バンソーコーを貰って、二人と別れる。
この辺りにまだ居るだろうか。
一軒一軒訪ねてみる。
「さぁ、わからないわよ。男と髪の長い女ってだけじゃ…。」
怪しむようにそう言って顔を背ける。
なかには、ノラ犬でも追いだすかのように、店にも入れない。
何軒廻っただろう。
ありがとうと言い店をでて、次はどこに行こうと思っていると“海”が居た。
あの男はいないらしい。
「大丈夫?」
“海”が僕に触れる。
「あの人とは、あの後すぐに別れたの。逃げてきた…っていうか、あなたが心配で…。あんなにヒドいこと…乱暴な人だったから…。痛い?」
初めて“海”が僕を見てる。
少し眉を寄せて、心配そうに…。
「帰ろう。」
手を握る。
「でも…いいの?」
「帰ろう。」
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