そして彼女にキスをする
第一章
その頃、僕は大学受験の為、一人でアパートを借りていた。
海に近いのでよく散歩をする。
気分転換に良いのだ。
冷たい空気。
まだ明けきらない空。
「今日も天気良さそうだな。」
サク、サク、サク…。
足音に目を向けると、一人の女性が海へ歩いている。
女の髪を舞いあげる風。
スカートがはためく。
するとそのまま海へ入っていく。
風によろめきながら。
「おい。何してんだ。」
歩く彼女。
「おい。聞こえてんだろ。危ねぇぞ。」
「おいってば。」
腕を掴む。
彼女は振り向いたがすぐに向き直し、何もなかったように歩き出す。
「何してんだよ。早くあがれよ。」
歩いていく。
仕方がないのでムリヤリ海からあげる。
「何であんな事したんだよ。」
僕をじっと見る。
ガラスのような瞳で。
「…とにかく家に来いよ。そのままじゃどうしようもないだろ。」
手を引き、家へ向かう。
「家はどこだ。」
「名前は。」
「いくつだ。」
何も話さない。
「まあ上がれよ。シャワーくらい浴びれるから。風呂は沸いてないけど。」
「ここが風呂。…シャワーの使い方ぐらいわかるよな?」
着替え着替え。
あ、タオル。
服…はこれでいいか。
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