そして彼女にキスをする

第十三章

会社へ行って、予備校へ行く。
そんな日々を送っていた。
かなり嫌がられているが、こちらも譲れない。
ある日、会社へ向かうとあの男が立っていた。
「“海”から伝言だ。『もう私のことは、忘れてください』と言っていた。彼女の意志だ。早く普通の生活に戻るんだな。」
「“海”に…、“海”に会っていたんですか。彼女は今何処に…。元気にしてるんですか。」
「彼女は元気だよ。君にこんな事をさせて申し訳ないと言っていた。さあ、もう分かったら君も帰りたまえ。もう二度と来ないでくれよ。」
「“海”に会わせてください！彼女が僕に忘れろなんて言うはずない。何かの間違いです。彼女がそんな…。」
「本当にしつこい男だな、君は。もう会いたくないと言っているんだよ。顔を見るのも嫌だと！君は捨てられたんだ！」
体を何かが走る。

キャー。

気が付いたら、警備員に抑えられていた。
あの男は倒れている。
警備員が
「何をするんだ。おい、警察を呼べ。」
「いやいいんだ。これでわかっただろう。君は、もうここへは来れないよ」
会社の敷地から追い出され、呆然と立ち尽くす。
“海”…、忘れるなんて…。
もう会えないのか…。
今度こそ本当に…？
「イテ…。」