そして彼女にキスをする
第四章
ある日、母が尋ねてくることになった。
明日来る。
前もって連絡しろと言ってあったのが幸いした。
女と暮らしていることは言ってないのだ。
“海”に明日は何処かに行っていてくれとお願いする。
一泊くらいしてほしいと。
“海”はわかったと言い、すぐに出ていった。
よっぽど引き止めようかと思った。
明日でいいのに。
もう帰ってこなかったらどうしよう。
でも今はしようがない。
帰ってくることを祈ろう。
翌日母が来る。
「あら、今日は随分キレイにしてるのね。ちゃんとご飯食べてる?」
まあなんとかと言い、ごまかす。
「彼女でもできたんじゃないの?でも今はダメよ。大学に受かってからにしなさい。」
そんなのはいない、今はそれどころじゃないと話し、
「今日は泊まるの?」
「そうねぇ。でも片ずけて帰るわ。お父さんのこともあるし。」
そう、と言いながら、だったら“海”に言わなきゃよかったと思った。
そうして母は
「彼女なんかダメよ。友達までにしなさいね。」
と言い残し、帰っていった。
はーあ。
“海”は帰ってくるのだろうか。
早く帰ってこないかな。
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