after a dream
不協和音
―… 堕ちた先には何があるだろう?
…なんで、今日に限って、
鍵を掛けていなかったんだろう?
そういう時に限って、開かれてはいけないはずの扉は、容易く開かれてしまう。
ガチャっと。
いつもは、夢のはじまりを教えてくれる扉の音が、冷酷さをもって、現実へと引き戻す。
「緒斗(おと)くーん?
…って、え?」
緒斗くんと先生を呼ぶ、可憐な花のように咲いたその声が、色を失ったように落ちる。
破壊を示すその音に怯んだ時には、全て、終わっていた。
咄嗟に、求めるように触れていた唇は離したけれど、霞先生の首にまわしていた手は、離れきれぬまま。
古びた小さな木の机に座る私に、覆いかぶさるようにしていた先生と一緒に。
入口で、笑顔のまま固まる、旭日先生をみた。
「…心陽(こはる)」
ここまできてしまったら、後戻りも弁解も、できるはずがない。
堕ちていくことだけでしか、私達は…
私は、救われない。
先生の掠れた声、旭日先生が覗かせる絶望感に、終わりたくない終わりが近づいているのを感じた。