after a dream
ふるふると瞳を震わすと、大好きなはるの香りに包まれる。
ー日向 陽希(ひなた はるき)
その名前そのものかと感じるような、ひだまりの匂い。
抱き締められていることに気付いて、私より厚みのある背中に手を回すと、ぎゅぅっと、やさしい力が強まった。
負けじと私も、はるをたくさん感じられる首筋に顔を埋めると、堪えきれずに涙が流れた。
「…ごめん、はる」
「んとだよ、こんなになるまえに言え、深詞。俺はお前の彼氏だろ」
私の涙に気付いてか、気付かずか、
あやすように頭を撫でてくれるぬくもりに、
数時間前まで、この愛情を疑っていたことがバカらしくなる。
…なんてことを、してしまったんだとも。
「今回のなんて特に、俺に聞けば一発だったろ?なんで聞けなかった?深詞に頼ってもらえなきゃ意味ねーんだけど」
首筋に埋もれる私の頭をやさしく撫でてくれていたはるが、私の真意を知りたいと、覗き込んでくる。
向き合いたい、そう訴えかけてくるはるの表情に。
…1ヶ月前までの私のままだったら、答えられなかったかもしれない。言えなかった。
「…はるが、いなくなるのが怖かった」
“あの日” に感じた恐怖。