after a dream
ー
ーー…
数週間たった夏を含んだ春の風が、中庭を吹き抜ける。
はるの大好物がつまったお弁当を片手に、並んでベンチに腰掛けると、おだやかな風にのって、やさしい音色が聴こえてくる。
時々、とまったり、はねたり、重なったりしながら…
「…あいつら、今日もか」
「婚約してるとはいえ、教師ってこと絶対わすれてるよね」
ー "あの日" から、もう1人では入ることのなくなった音楽準備室。
はると一緒に見上げると、
遠慮なく開かれた窓から、模様替えしたシェルピンクのカーテンが、風にゆられて、ひらひらと空を泳いでる。
…まるで2人が。
…私達が、奏でる、
色とりどりなメロディを、待ちわびていたように、たのしんでいるみたいだ。
低い音、高い音。はじめて出会う音。
色んな音があるけれど。
どの音を鳴らしてみても、
壊れた音は、もう鳴らない。
…夢は遠く、空の向こうへ。
[ after a dream ]
ー… 大切なのは、キミでした。
-end-