after a dream
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ーー…
こわれそうな音が、こわれた音。
嫌味なくらいに、やさしい陽だまりの中、
朝4時起きしてつくった、ぐちゃぐちゃなお弁当箱を抱えて向かった中庭。
…花粉のせいか、たまに吹く風の冷たさのせいか、なにかを察してなのか。
あたたかい季節には、人気スポットになるこの場所に、珍しく人はいなくて。
代わりに、珍しく馴染みきれてない後ろ姿が、目的の場所にいた。
「…霞 緒斗、先生?なんでここに…?」
今期から音楽を教えてくれることになったと、始業式の時に紹介された先生だった。
背中だけでも、クラスにいる男子はもちろん、一学年上の先輩と比べたって、物理的な大きさは違う。
…はずなのに。
「…え?…あ、いや…」
どこか折れてしまいそうな背中。
私を振り向いた先生の顔は、大事なものが…正気が、ごっそり抜かれてしまったみたい。
血の気の引いた青白い顔に、危うさを感じずにはいられなかった。
「大したことじゃないよ」
なんていわれても。