after a dream



とはいえ、その瞬間まで、一度だって話したこともない 霞 緒斗 という先生。

血が巡っているのか不安になるくらいの顔で、
大したことないなんて言われても、

大したことあるに決まってるじゃないですか。

とは、言えるはずもなく。


私の横を通ってふらりと、去って行こうとする姿を見送ろうと思った。



…ただ、気になって。

数秒前まで先生がみていた先を、私もたどった。



「……っ!あれ、って…」


ー息を、置いていきそうになった。



追いかけた先で見つけたのは、よく知る笑顔だったから。

その笑顔は、綿菓子みたいにふわっと可愛らしく、楽しそうに幸せそうに、目尻を下げている。


ー…旭日 心陽(あさひ こはる)先生。


先生が着任した時に誇らしげに話していた、ウワサの彼女さん。

未来を約束したと聞いていたはずなのに。



「……っ、」



旭日先生の細くやわらかそうな指が、
霞先生じゃない男子生徒の口元をなでた。


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