あたしだけを愛して
事務所に行くと親父は席を外していたから、秘書の斉藤さんに書類を預けた。
「恭哉くん、わざわざごめんなさいね。助かったわ~」
斉藤さんは俺がガキの頃、
よく面倒を見てもらって
いた。
「いえ、大丈夫です」
「あ、そうそう!今日ね、うちの事務所の期待のモデルが撮影してるのよ。
結城亜衣ちゃんって言うんだけど、よかったら見ていってね」
そう言って、書類を片手に
どこかに行ってしまった。
モデルか…
正直言って、俺はそういうのに全く興味がない。
走ってきたせいか、ひどく
喉が乾いていたから自販機
に行こうと思い、俺も社長室
をあとにした。