吐息が愛を教えてくれました
逃げ出した週末
今朝まで降り続いていた雨が嘘のように、星が綺麗な夜空を見上げると、自分ひとりが取り残されたように思える。
足元の水たまりをよけながら、小さくため息を吐いた。
「結局、こうして帰ってしまうのよね」
肩にかけている鞄をよいしょ、と抱え直して、自分に気合いを入れる。
そして、まっすぐに伸びた道の向こうにある茶色い建物に向かって歩みを進めた。
あと五分もしないうちに着くに違いない我が家。
今の私にとっては、一番帰りたくない場所だ。
できることならこのまま逃げ出したいけれど、そんなわけにはいかない。
重い足をどうにか動かして、少しずつ近づいていく。
音々ちゃんの家にこれ以上お世話になるわけにもいかないし、私にだって自分の生活があるし。
どうあがいても、帰る場所はここしかない。
その現実に苦しんだだけの週末は終わろうとしている。
ふと見上げると、私の部屋に灯されている灯りに気づいた。
「やっぱり、来てる……」
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