吐息が愛を教えてくれました
「高校の入学式の時に、私は千早に一目ぼれしたんだよ。同じクラスになって、少しずつ友達として近くにいられるようになって、それだけで嬉しかった。私がピアノのおけいこの日には、放課後急ぐ私に「頑張れよ」って声をかけてくれたでしょ?すごく励みになったし、練習も頑張れた。そして、気づけば千早のことを好きになってたけど……」
「実里、それ、ほんと?」
「うん、今更嘘なんて言わないよ」
「うわっ。実里がそんなに自分の気持ちを素直に口にするなんて、別人みたいだな」
戸惑い、驚く千早はぎこちない仕草で私の頬を撫でてくれた。
これまで閉ざしていた私の本心を聞いて、言葉通り別人のようだと思ったんだろう。
瞳がゆらり、その心情を表している。
今になって私が千早を好きだなんて言って、どうしていいのかわからないに違いない。
私だって、自分の本当の想いをこうして千早に告げるなんて、想像もしていなかった。
千早にとっての私は、忘れることができない過去の残骸に過ぎないと思っていたから。
私が一方的に千早を好きだというだけで、高校時代の彼には、私なんか目に入らないくらい好きな女の子がいたんだから。
それを、痛いほど知っていた私には、自分の気持ちを千早に告げることはできなかった。
バスケ部だった千早は、マネージャーだった女の子のことが好きで、どうすれば気持ちを伝えられるのかと、悩んでいた。
同じクラスの気の合う仲間同士、そんな関係の私には、その悩みを聞いてあげることしかできなくて、自分の気持ちには鍵をかけ、一緒に遊んでいた仲間たちにもその気持ちが気取られないように、注意をしていた。
そんな中で起きた事故。