吐息が愛を教えてくれました
「俺がぶら下げてた?ああ、彼女は勝手に俺にぶら下がってただけで、実里が拗ねることは何もない。
俺のことを気に入ってくれてるみたいだけど、俺は、その気持ちには応えるつもりはないし、心配するな」
「そんなの……千早が彼女を気に入ってるなら、ちゃんと応えてあげればいいじゃない。私みたいなお荷物なんて放り出してもいいのに」
「お荷物ってなんだよ。また、あれか?俺が罪の意識で実里の側にいるから解放してやるとか言うわけ?
ふん、そんな悲劇のヒロインぶった言葉で俺を放り出そうなんて100年、いや、100万年早い」
「ひゃくまんねん……」
千早は呆れたように息を吐いて、私を再び抱き寄せた。
微かに抵抗した私を力で押しとどめ、その胸に囲い込むと、私の後頭部を、げん骨でコツンと一発。
まるで撫でるような優しいげん骨だ。
「あのなあ、俺が実里を放り出そうとしてるんじゃなくて、実里が俺を放り出そうとしてるんだろ?
恋は盲目って言うけどさ、その本来の意味からずれた盲目さをどうにかして欲しいよ。
俺のことが好きなら、ちゃんと見ろよ。俺が実里を心から愛して側にいたいって思ってるって、どうしてわからない?」