吐息が愛を教えてくれました
覚悟していたとはいえ、今は千早の顔は見たくない。
金曜日、私が千早の大学から駆けだして以来なんの連絡もよこさなかったくせに、どうして普段と変わらず私の部屋にやってくるんだろう。
「……あの女の子と一緒じゃないんだ」
複雑な思いで呟いて、胸の中に湧き上がる切なさを実感する。
色白で、瞳がきらきらとしていた可愛らしい女の子だったな。
私よりも小柄で、細身のジーンズと白いふわふわのセーターがやけに似合っていた。
私を見た瞬間に歪んだ顔を見れば、私が千早の彼女であると、既に知っているんだとわかった。
そして、それでも尚、千早の腕に置いた手を離そうともしなかった様子からは、絶対に千早を諦めないと宣言する強さも感じられた。
「……可愛かったし、一途そうだったな」
彼女の髪の色がきれいなマロンブラウンだったと思い出さなくてもいいことまで思い出して、自分で自分を苦しめた。
そして、千早が高校時代に好きだった女の子と似ているように思うのは気のせいだろうか。
最近、千早の近くにいる女の子を見る度にそう感じてしまう。
そして、その女の子たちみんながかわいく見える。
私よりも、ずっと。