吐息が愛を教えてくれました
私の顎に手を差し入れて、そっと上を向かせると、千早は掠めるようなキスを落とした。
背中に回されている腕に、私を絶対に逃がさないとでもいうような力がこもったのを感じる。
見上げた先にある、千早の視線はとても悲しげだ。
「俺を愛したあまり、俺の幸せを考えるあまり、実里が盲目的に俺の気持ちを誤解してるのには気づいてた。
あの事故で俺を助けたせいで聴力を半分失った実里への、贖罪……それだけの気持ちで側にいるって思ってるのを見てるのは、正直つらかったけど。……そのことに気づいてなかっただろ?」
私の額に千早の額が合わさる。
音もなく、ゆっくりと。
瞬きの音すら聞こえそうな近い距離に、私の気持ちは温かくなり、そして体の力が抜けていく。
やっぱり、千早が好きだな、と。
そう感じて自分からも額を寄せた。
くくっと笑い声をあげる千早。
「どうせ盲目的になるなら、俺の気持ちを読み違えて右往左往するよりも、ひたすら俺に夢中になって周りも何も見えない実里を見たいんだけど」