吐息が愛を教えてくれました
あー、そっか。
千早がツナサンドを好きだってことも知ってるんだ。
週末の予定だって、本人よりも把握してるようだし。
よっぽど……。
『じゃ、私、帰る。研究、頑張ってね。あ、あまり飲みすぎないようにね……』
大学院で千早と一緒に学んでいる仲間の人たちも、千早を待ちながら私をチラチラ見ていて。
周囲全てが敵ばかりのようだ。
その状況に耐えられなくなった私は、千早にさよならと言って、そのままじりじりとあとずさると、一気にその場を走り去った。
学生は学生同士、か。
大学院に進んだ千早と、大学を卒業して音楽教室の先生をしている私。
二人の距離は意外に大きくなっていたのかもしれない。
履きなれているはずの5センチヒールがやたら私の足どりを重くするけれど、それに負けず、ただただ必死で大学をあとにした。
千早の大学から最寄りの駅までは徒歩5分だけど、その5分すら受け入れられなくて、早くこの場から離れたいと思った私は、大通りに出た途端、客待ち中のタクシーに飛び乗った。
『あ、あの、えっと……音々ちゃんちまで』
どこに行くかも決めてなかった私は、とっさに頭に浮かんだ親友の名前を言って、運転手さんに怪訝そうな顔をされた。
そして、週末は大学時代からの親友、音々ちゃんの家で過ごした。