アイドルな王子様
 どっ…ひぇー……。


 覚悟はしていたつもりだったが、到着した段ボールは想像を超える大きさと量だった。


 驚いてたって仕方ない。

 さくさく捌かねば!

 カッター片手に次々と段ボールを開ける私を尻目に、野村さんがパートさん達を集めて何かこそこそと喋っている。


 …ったく、どうせ私の陰口なんだろうけど、どうでもいいからこの荷物をやっつけてからにして欲しい!!


 やがて、野村さんを除くパートさんたちは着いた商品をストックルームに運び出してくれたので、取り敢えずほっとする。


 デパートが開店してお客様がいらしても、未だブティックに箱のままの商品が積まれているのは、美しくないので許されない。

 なので、一旦全てをストックルームに運びこんでから、商品数を伝票と照らし合わせ、箱の品番と中身が合っているか、ダメージがないかを一点一点確認して、再び箱に仕舞い、判りやすい所へ取り出しやすいように収納する。

 息吐く暇もない!


 のに、いつまで経ってもパートさん達は検品作業にやってこない。


 彼女たちに仕事を分配して、速やかに取り掛からせるのは私の役目なのだけれど、相手は私より年上の女性ばかりなのでそう簡単にも指示出来ないのが、キャリアの浅い下っ端社員の悲しい性。


 仕方なく、私はストックルームの床を埋め尽くす商品の山の検品に一人で取り掛かった。




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