アイドルな王子様
「わ、私見たわよ! 翠川さんが嫌がる金沢さんの肩に擦り寄っていっていたのを」


 山田さんは私から目を反らしながら言い放つ。

 私はそれでピンときた。

 山田さんは、ボスの野村さんに強制されて言わされてるんだ。

 こっこの人は…。そんなにしてまで野村さんに取り入ってどうすんのよ?


「私、そんなことしてません」


 いつまでも見下ろされているのも腹立たしいので、私も立ち上がって否定した。


「なぁに!? じゃああなたは山田さんが嘘吐いてるって云うつもり!?」


 ついてるわよ、ウソ。

 私から金沢さんになんて触れたこともございませんもの。


 野村さんがついに金切り声を上げた。

 いびりタイムもクライマックスってこと?


「翠川さん、アンタってなんて面の皮が厚いの!?」


 なに!?

 ぴきっと自分の額に青筋が走るのを感じる。

 そのうち、いびりに山田さんも参戦してくる。 


「私を嘘吐き呼ばわりするなんてサイテー!」


「私、36年生きてきてアンタほど嫌いになった人間っていないわ!!」


 私だって24年生きてきて、こんなにイジメられたことも嫌われたこともないわ!

 だって私って小心者だから人との争いを避けて生きてきたんだもん。

 それに、嫌いなのはお互い様…ええ!?


 今、36歳って云いましたか?

 私より12コも年上なの??

 なのに大人げなく徒党組んでこうして私をいびったり、ヤンキーみたいなちゃらちゃらした恰好してんの!?

 まさかそんなに年上とは…。


 どおりで金沢さんに執着するわけだわあ。


 彼を逃すと(ってか、相手にされてないみたいだけれど)もう後がないかも知れないものね。金沢さんほどのオオモノは。





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