アイドルな王子様
「……ヒトが大人しくしてりゃあ…」
「え?」
私は、未だ髪を掴み上げる伊藤さんのお腹に軽く肘鉄を食らわした。
「ぐっ」
伊藤さんはお腹を抑えて低く呻いた。
「てめえ、なにすんだよ!」
「あんたがいつまでも私の髪を引っ掴んでるからよ」
…ダメだ、もう自分自身に歯止めが効かない。
「黙って聞いてれば、何? 私が何だって? くっだらない話ばかりをでっちあげて、多勢に無勢で寄ってたかっていびってくれちゃってそんなに楽しい?」
野村さんたちは目を白黒させて私を見ている。
「なーにが、性悪よ? 厚顔無知よ? 笑わせないで!」
一堂をぐるっとねめまわす。
「いつもいつもくっだらないことで陰険にいびってくれちゃって。仕舞いには山田さんに嘘まで吐かせて、面の皮が厚いのは一体どっちよ!!」
「な、な…」
「いい加減にしてよ!! 今は仕事中よ! 忙しいの判ってるでしょ!? 仕事してよ!」
「下っ端の指図なんか受けないわ!」
「ふざけないで! 私はマネージャーからあなたたちを指図するように言い遣ってんの! これがうちの社の方針よ。お給料貰ってんだからさっさと働け!」
「命令する気!?」
「そうよ、今朝の早番責任者は私なんだから!」
「私たちはアンタなんか認めないわよ!」
まったく、このオバサンたちは……!!
「うるさい!! そんなに私が目障りならこんな陰湿な女ばかりの職場なんか辞めてやる! それで満足なんでしょうが。はんっ、私だってあんたたちのように醜い心根の人間と関わらなくて済むかと思うとスッキリするってもんよ。ええ、辞めてやるわ! だからっ、今はさっさと働けえっっ!!」
いささか、売り言葉に買い言葉気味だったけれど、こんなサイテーな職場、もううんざりだった。
怒鳴り散らしてすっきりもしたし。
その後、諸悪の根源・野村佳代はむすっとしたまま渋々検品を始め、後のオバサンたちもそそくさと彼女に続いた。
そうして、嵐のような早番の朝は、気まずいながらも静けさを取り戻したのであった。
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「え?」
私は、未だ髪を掴み上げる伊藤さんのお腹に軽く肘鉄を食らわした。
「ぐっ」
伊藤さんはお腹を抑えて低く呻いた。
「てめえ、なにすんだよ!」
「あんたがいつまでも私の髪を引っ掴んでるからよ」
…ダメだ、もう自分自身に歯止めが効かない。
「黙って聞いてれば、何? 私が何だって? くっだらない話ばかりをでっちあげて、多勢に無勢で寄ってたかっていびってくれちゃってそんなに楽しい?」
野村さんたちは目を白黒させて私を見ている。
「なーにが、性悪よ? 厚顔無知よ? 笑わせないで!」
一堂をぐるっとねめまわす。
「いつもいつもくっだらないことで陰険にいびってくれちゃって。仕舞いには山田さんに嘘まで吐かせて、面の皮が厚いのは一体どっちよ!!」
「な、な…」
「いい加減にしてよ!! 今は仕事中よ! 忙しいの判ってるでしょ!? 仕事してよ!」
「下っ端の指図なんか受けないわ!」
「ふざけないで! 私はマネージャーからあなたたちを指図するように言い遣ってんの! これがうちの社の方針よ。お給料貰ってんだからさっさと働け!」
「命令する気!?」
「そうよ、今朝の早番責任者は私なんだから!」
「私たちはアンタなんか認めないわよ!」
まったく、このオバサンたちは……!!
「うるさい!! そんなに私が目障りならこんな陰湿な女ばかりの職場なんか辞めてやる! それで満足なんでしょうが。はんっ、私だってあんたたちのように醜い心根の人間と関わらなくて済むかと思うとスッキリするってもんよ。ええ、辞めてやるわ! だからっ、今はさっさと働けえっっ!!」
いささか、売り言葉に買い言葉気味だったけれど、こんなサイテーな職場、もううんざりだった。
怒鳴り散らしてすっきりもしたし。
その後、諸悪の根源・野村佳代はむすっとしたまま渋々検品を始め、後のオバサンたちもそそくさと彼女に続いた。
そうして、嵐のような早番の朝は、気まずいながらも静けさを取り戻したのであった。
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