アイドルな王子様
 かくして。


 私はその日のうちに退職願を提出した。


 突然の私の行動にマネージャーは目を白黒させ、直ぐさま私を近所の喫茶店に引っ張っていき、辞表を取り下げるよう説得してくれた。


 けれど、私はもうあの女たちの醜い想念の渦巻く職場とは少しでも早く縁を切りたかったし、あそこで息をすることすら嫌だった。

 私はマネージャーに今まで野村さんたちにされた嫌がらせをすっかりぶちまけ、退職の意志は変わらないことも伝えた。



 これで、奴らとの縁が切れる。

 他人からは、私は嫌がらせに屈したようにも見えるかも知れないけれど、彼女らの次元でのいさかいは私には無意味に思えた。


 負の感情をもうこれ以上持ちたくない。


 自分の心根が腐っていくのを見るのは堪え難いから。


 退職という選択は間違っていない。


 人間が腐ってしまう前に、自分をリセットするんだ。



 ああ……清々するわ!!




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