アイドルな王子様

真夏の魔法

 翌朝、私はアラームよりも早く目が覚めた。


 仕事をしているときはなかなか起きられなかったけれど、無職になってみるとなんとしゃっきり寝覚めの良いことか。


 私はカーテンを開けて、網戸越しの空が快晴なのを確認すると、お布団を畳み始めた。


 昨夜は結局、聖夜さんの行きつけの旅館に泊まった。

 でも、やはり空室はなく、おかみさんのご好意で、島を出ているお嬢さんのお部屋に泊まらせて頂いたのだった。



 荷物が携帯電話しかないので、お化粧も昨夜落としたきり。

 すっぴんで出歩くなんて、中学生以来?

 聖夜さんと一緒なのに、やだなあ。

 なんて考えていたら、ドアをノックする音が聞こえた。


「はいっ」

「オレ。朝食いかない?」


 ドアを開けると、未だ少し眠そうな聖夜さんが昨日とは違うTシャツとジーンズ姿で立っていた。

 今朝は、髪を無造作に後ろでひとつにまとめている。

 そのせいか、凄くきりっとしたハンサムさん。

 やっぱり山猫ちっくだけど。


「おはようございます。今日も宜しくお願いします」

「おはようございます。こちらこそ宜しく」


 二人で深々と頭を下げ、顔を見合わせて笑った。





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