アイドルな王子様
「今日は、これからどうしたい?」


 聖夜さんはお茶をすすって一息つきつつ、訊ねる。


「…どうしましょう?」

「折角来たからには観光してく? それともすぐに稚内に戻りたい?」

「聖夜さんは? どうする予定なんですか?」

「俺は別に…毎年来てるし。ウニも喰ったし」

「ほんとにウニ食べに来たんだ」

「うん。ウニ喰って、ここに泊まらないと夏が来た気がしない」


 またお箸を持って、食事を再開する彼。

 細いのに、割と大食漢なんだ。

 それとも、男の人ってこんなもんなのかな。

 余りお付き合いとかしたことないからわかんない。



 もっと、知りたいな。聖夜さんのこと。


 もう少し一緒にいたいな…。



「レンタカー借りて、夕方のフェリーの時間まで観光しよっか」

「えっ」

「月杏ちゃん、北海道来て散々な想い出ばかりだろ? それだけで帰るのは悲しい。また来たいと思えるような良い想い、させてやりたくなった」

「ほんとに? …嬉しい!」


 本当は、もう既にまた来たいと思っちゃっている。

 聖夜さんや、おかみさんの温かい人柄に触れて。

 置き引きにはへこんだけれど、今はこの出逢いをくれたことに感謝さえしているんだ。






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