アイドルな王子様
 ぐっしゃ と音がして、焦げ茶の殻の中心が無惨に砕けた。

 ひっえ~…結構聖夜さんってば、端正な顔に似合わず無茶ってか、ワイルドってか、なかなかに思い切りが良いんだ。

 そんな私の感嘆をよそに、彼はぺっぺっと砕けた殻を放り捨て、中から現れた鮮やかな橙いろを掬うと、おもむろに海水に手を突っ込んでぱしゃぱしゃと洗った。


「はい、召し上がれ」


 そう云って差し出された彼の掌には、色鮮やかに艶々としたオレンジ色の宝石がころころ乗っていた。

 食べ物を宝石に例えちゃうあたり、私もかなり食い意地が張ってるというか。

 でも、それは食べちゃうのが勿体ないくらいに綺麗で。

 …勿体ない理由はまだある。

 聖夜さんが、一生懸命に採ってくれたかと思うと、ただこの綺麗な結晶を口に入れて消化しちゃうのが惜しくて。

 ああ 家に持って帰って飾りたい…。


 あれ?

 私ってば、どうしてこんなこと思っちゃうの?




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