アイドルな王子様
 がんがんがんがん。

 アタマのなかで鳴り響く。がんがんがん。


『オレ、3年以内に結婚します』

 ショックの素がアタマにこだまする。


 …そりゃあ 私も24歳のイイ大人。

 ゲーノージンと自分がなんとかなっちゃうってな夢なんか見ちゃいないけれど。

 それでも、休み明けの憂鬱な朝、出勤前に聞きたい台詞じゃあないわよね。


 ひとしきりショックを堪能し、私はのろのろとドレッサーに向き直る。

 したくもない化粧をするために。


 銀座の高級ブティックの店員らしく、薄化粧に見える厚化粧を浮かない顔に施していった。




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