アイドルな王子様
 だって、聖夜さんの今夜のお宿ってば、かなりのボロ。

 一応オンナノコの私にとっては、永遠に遠慮しちゃいたいような年季の入った民宿だった。

 きっと、お値段も相当リーズナブル。


 そんなところにお宿を取る彼は、恐らくセレブなんかじゃあないよね。

 それは、彼の身なりからも明らかで。


 でも、そんなことはどうでもいいことに思えた。

 彼自身の魅力や人間性の前には、「セレブ」なんて言葉は凄くちっぽけで色褪せて感じる。

 まるで、味も香りも刺激もないシャンパンのよう。

 意味も価値もないの。

 お金があるかないかなんて、関係ない。


 聖夜さんは、ただそこに存在するだけで意味がある素敵なひと。


 私は彼に救われ、癒やされ、そしてどきどきさせられる。


 ただ一日を過ごしただけで、心は彼で満タン状態。

 こんなの、これまでの私の人生にはなかったことだった。





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