アイドルな王子様
「なに勝手にヒトを肴にしてんだよ」


 むっとした表情で聖夜さんがカンジさんを睨む。


「おまえが美女連れて二人で来たって、なかでうちの奴らが騒いでるよ。んで、めでたいってんでこの料理の数々だ」

「俺たちで遊んでやがんな?」

「とんでもない。本気で喜んでんだぜ」


 カンジさんは、ケーキとアイスクリームが山盛りにされたお皿を私たちの前にそれぞれ置き、そして聖夜さんの隣にどすんと座った。


「いつも野郎の集団としかこない聖夜が、こんな可愛い女の子をうちに連れてきたとなっちゃあ、祝わずにはいられないよな」

「いや、深い意味は…」

「フラフラしまくりの聖夜も、やっと腹決めたかって俺は嬉しくて。あっほら食べなよ。アイス溶けるぞ」

「はっはい、いただきます」


 慌ててアイスの山を切り崩す。


「おまえなぁ…ヒトの話はちゃんと聞け」

「ああ? ってかこの娘、聖夜の好みど真ん中、ストライクだろ?」

「ストライクてお前…」

 聖夜さんは真っ赤になって口をぱくぱくさせている。


「俺にはお見通しだぜ。長い付き合いだからな。もたもたしてねーでここらでオトコを見せろよ?」

「あ? なに云って」

「結婚祝いは何が良い?」


 聖夜さんはカンジさんをきっと睨む。

 そんなことお構いなしで、カンジさんは聖夜さんのデザートをつつきだした。

 ふたりのやり取りが楽しくて、私はケーキを頬張りつつ、甘い気分に浸っていた。


 この甘いシアワセは美味しいケーキの所為なのか。


 それとも、彼が傍にいるからなのか…。




.
< 61 / 77 >

この作品をシェア

pagetop