アイドルな王子様
見上げるとそこには、お店の制服を着たひょろんと細長い若い男の子が立っていた。


「もう、いつまで話し込んでるんすか。早く仕事してください」


 細い見かけによらず太い声で話すその子は、ぎろっとカンジさんを睨んで続けた。


「俺らだって聖夜さんと話したいけど、店が混んでるから我慢してんですよ。さっさと働いてくださいよ」

「オレは聖夜のシアワセをだな」

「それはもういいから、カンジ戻ってやれよ。デートの邪魔すんな」


 聖夜さんは手をひらひらさせて、あっちいけ、のポーズをする。

 結局、ぶつぶつ云いながら、渋々とカンジさんはカウンターの奥へと消えていった。


「ごめん、傍若無人な奴で」

「ううん。面白いひとね」


 それに。

 カンジさんは、聖夜さんのことが大好きなんだね。

 温かい気持ちが込み上げてきて、自然と笑みがごぼれてしまう。



「いいお友達がいて幸せだね」

「ああ? お節介なヤロウだよ...まあいい奴だけど」


 そう云って聖夜さんも、嬉しそうににっこりと微笑んだ。 


 男同士の友情って、オンナの私にはよく解らないけれど、なんか素敵ね。





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