アイドルな王子様

 『運命の恋人って、俺だったりして』



 うんめいのこいびとって おれだったり...


 聖夜さんが、運命の恋人だったら........


.....なんて、素敵なの



「......なんてな。王子様がフリーターだったら話にならないよな」

「そんなことっ」


 ないよ。

 私、聖夜さんに出逢えたことに感謝してる。

 置き引きに遭ったのは災難だったけれど、犯人にも、船酔いにも感謝してる。

 退職して北海道へ旅に出たことも、最良の決断だったのかもしれない、なんて。

 .....さっきまでのネガティヴは何処へやら。

 

「せめて白い外車にでも乗ってないと。...俺の車、黒だし」

「えっ、聖夜さんて車持ってるの?」

「.....俺いくつだと思ってんの。そりゃ持ってるよ」

「じゃあ都内を運転出来るの?」

「ああ.....出来ないの?」

「うん!! ペーパー」

「.....じゃあ今度教えてやるよ...手取り足取り」


 そう云って、聖夜さんは上目使いに私を見てニヤリと笑った。

 その悪戯っぽい視線に、私はくらくらしてしまう。


 ああ......

 私ってば、完全に恋に堕ちてしまった.....。





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