アイドルな王子様
「月杏は鈍そうだもんなあ、思いっきり」

「ひどっ.....けど、体育は3だった」

「5段階で?」

「---10段階で。泳げなくて2貰ったこともある」

「本気で?? どんだけ運痴なんだよ?」

「--聖夜さんてさあ。口悪いよね、結構」

「あ、やっぱり? よく云われる」

「顔に似合わないよ」

「ええぇっオレどんな顔よ?」

「そりゃあ、かっ」


 っこいい、と云いそうになって慌てて言葉を飲み込んだ。

 『好き』という感情を意識してしまってすぐに、面と向かって『格好良い』なんて言葉を吐けるほど、私は素直でもなければ、恋の駆け引きに長けているわけではない。


「か?」


 真っ赤になって無言で固まる私に、聖夜さんは訝しげに先を促した。


「......カッパ、みたい?」

「ええ! 何処が!?」

「アタマ」

「げっほんと? ちくしょー、髪切って失敗した」

「はっ? いや、そんなことないよ!」

「だって河童なんだろ?」

「う.....うん、でもっカッパ、かっ可愛い、よ?」


 素直じゃない私。

 カッコイイとは、やっぱり云えなかった。

 
 ざんぱらの野暮ったくてこ汚かった長髪が、今やすっきりと洗練されたスタイルになり、聖夜さんの涼しげな切れ長の瞳がはっきりと見えて。

 彼の整いすぎた貌が露わになった現在では、いささか以前とは別の意味で近寄りがたい印象。

 だって、芸能人みたいに周囲とはまるで違ったオーラを放っている。

 
 これって、恋に狂った私のヴィジョンだけなのかしら??









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