アイドルな王子様
「...ごめんね。イヤだった?」


 女性の消えた奥の扉を茫然自失で見やる私に、聖夜さんが申し訳なさそうに云った。


「えっ、イヤだなんてそんなことっ」


 あるわけないじゃん!

 むしろ嬉しかったりして。


「ただちょっと...びっくりしちゃった」

「ごめんごめん。うーんと、実はさ。彼女との間には色々あってね...俺たちに関する誤解に便乗して、この際だから月杏に協力して貰っちゃおうかと突然に閃きまして」

「ふ、ふうん?」


 『色々あって』ってなによ?

 もしかして、別れ話がもつれていた元カノとか??

 まさか、元カノじゃなくて、喧嘩中の今カノにヤキモチ妬かせたかったとか!?

 訊いちゃいけないんだろうけれど、もの凄~く気になるっ!


 すると、私の心を読んだかのように、聖夜さんはニヤリと笑って頬杖をついた。


「元カノとかじゃないよ、残念ながら」

「ええっ。やだ、私なんにも」

「そお? いろんな想像巡らてせそうなカオしてたけど?」


 おっ お見通し!




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