アイドルな王子様
赤くなったり蒼くなったりする私と、相変わらずにやにや含み笑いをする聖夜さんのもとへ、パックされたお料理が入った紙袋を提げたカンジさんがやって来た。
「なんだよ。なに見つめ合ってんだよ、コノヤロウは」
云いながら、どん、とずっしりとした紙袋を聖夜さんの頭に乱暴に載せる。
「やめれ。」
「おまえ、奥でチエがキイキイ云ってたぞ。見せつけんのやめてくれよな。八つ当たりされんのはオレらなんだからよ」
「そりゃすみませんでしたね」
心底迷惑そうなカンジさんに対して、聖夜さんは少しも悪びれてはいないようだ。
「つきこちゃん、チエになんか厭味でも云われなかった?」
察するところ、チエさんというのはさっきの女性だな。
「いえ、別に...」
「そうかあ? ならいいんだけどさ。チエの奴、この女ったらしのことを何年もずっーと追いかけててね。まるっきり相手にされてないのに、まあその追いかけっ振りったらストーカー並でよ」
「カンジ。いらんお喋りはいい。さっさと会計してこい」
自分のお財布をカンジさんの顔面目がけて放り投げると、聖夜さんはしっしっと手を払った。
お財布はカンジさんの鼻に見事命中したが、それを気にするでもなく彼は尚もぶつぶつと続ける。
「まったく。この万年仏頂面の女ったらしの何処がいいんだか理解できんね。ツラが良いと苦労するよな、聖夜」
「うるせえっつの。それから『女ったらし』は訂正しろ」
「やだね。大学時代に彼女を奪られた恨みは、簡単に昇華できんからな」
「人聞きの悪い!」
「一生云ってやる」
ひっひっひっ と笑いつつカンジさんは、聖夜さんにお財布を突き返した。
「今日はオレがご馳走するよ。なんたって、聖夜が身を固める決心をしたお祝いだからな。金なんか取ったら罰があたる」
「おい、だからそれは」
「また次に例の野郎共と来てくれた時には、がっつりぼったくるからさ」
そう云って、カンジさんはとっても愛嬌ある笑顔で、とっても下手くそなウィンクをした。
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「なんだよ。なに見つめ合ってんだよ、コノヤロウは」
云いながら、どん、とずっしりとした紙袋を聖夜さんの頭に乱暴に載せる。
「やめれ。」
「おまえ、奥でチエがキイキイ云ってたぞ。見せつけんのやめてくれよな。八つ当たりされんのはオレらなんだからよ」
「そりゃすみませんでしたね」
心底迷惑そうなカンジさんに対して、聖夜さんは少しも悪びれてはいないようだ。
「つきこちゃん、チエになんか厭味でも云われなかった?」
察するところ、チエさんというのはさっきの女性だな。
「いえ、別に...」
「そうかあ? ならいいんだけどさ。チエの奴、この女ったらしのことを何年もずっーと追いかけててね。まるっきり相手にされてないのに、まあその追いかけっ振りったらストーカー並でよ」
「カンジ。いらんお喋りはいい。さっさと会計してこい」
自分のお財布をカンジさんの顔面目がけて放り投げると、聖夜さんはしっしっと手を払った。
お財布はカンジさんの鼻に見事命中したが、それを気にするでもなく彼は尚もぶつぶつと続ける。
「まったく。この万年仏頂面の女ったらしの何処がいいんだか理解できんね。ツラが良いと苦労するよな、聖夜」
「うるせえっつの。それから『女ったらし』は訂正しろ」
「やだね。大学時代に彼女を奪られた恨みは、簡単に昇華できんからな」
「人聞きの悪い!」
「一生云ってやる」
ひっひっひっ と笑いつつカンジさんは、聖夜さんにお財布を突き返した。
「今日はオレがご馳走するよ。なんたって、聖夜が身を固める決心をしたお祝いだからな。金なんか取ったら罰があたる」
「おい、だからそれは」
「また次に例の野郎共と来てくれた時には、がっつりぼったくるからさ」
そう云って、カンジさんはとっても愛嬌ある笑顔で、とっても下手くそなウィンクをした。
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