アイドルな王子様
カンジさんはじめ、店員さん全員に賑やかに見送られ、私たちはお店を後にした。
お店の門扉をくぐる前に、カンジさんは私の腕を引き、すぐ横の紫陽花の茂みに誘って耳打ちをした。
「あのさ、聖夜のこと。マジでよろしくね」
彼のその表情には、先程までのおどけた感じは微塵もなく、柔らかな街頭に照らされた眼には真剣な光が宿っている。
ああ、何と答えていいものか。
カンジさんは、聖夜さんと私が結婚を前提としたお付き合いをしていると信じ切って、喜んでいる。
彼の聖夜さんに対する友情は本物で、だからこそ聖夜さんの幸せを望んでもいるし、心底心配もしているんだ。
彼等は信頼という絆で結ばれてもいる。
そんなカンジさんに『実は全くの誤解です』なんて、私の口から暴露しちゃってもいいものだろうか?
「あっ、もしかしてさっきのこと気にしちゃってる?」
私が答えに詰まって沈黙していると、カンジさんはまた何か早合点してしまったらしく慌てて両手を振った。
「あいつのこと女ったらしなんて云ったのは、ほんの冗談だからね!」
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お店の門扉をくぐる前に、カンジさんは私の腕を引き、すぐ横の紫陽花の茂みに誘って耳打ちをした。
「あのさ、聖夜のこと。マジでよろしくね」
彼のその表情には、先程までのおどけた感じは微塵もなく、柔らかな街頭に照らされた眼には真剣な光が宿っている。
ああ、何と答えていいものか。
カンジさんは、聖夜さんと私が結婚を前提としたお付き合いをしていると信じ切って、喜んでいる。
彼の聖夜さんに対する友情は本物で、だからこそ聖夜さんの幸せを望んでもいるし、心底心配もしているんだ。
彼等は信頼という絆で結ばれてもいる。
そんなカンジさんに『実は全くの誤解です』なんて、私の口から暴露しちゃってもいいものだろうか?
「あっ、もしかしてさっきのこと気にしちゃってる?」
私が答えに詰まって沈黙していると、カンジさんはまた何か早合点してしまったらしく慌てて両手を振った。
「あいつのこと女ったらしなんて云ったのは、ほんの冗談だからね!」
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