世界の終わりに隣に君がいてくれたらそれだけでいい…
 私は目を開けたまま驚いた。

 キスって別に初めてなんかじゃない私は結婚だってしてる。

 今さら、驚くことなんて1つもない・・・。

 それなのになんでこんなに胸がどきどきするんだろう・・・。

 彼の匂いはまだ男の子の匂いがした。

 駄菓子とか、お日様とか・・・。

 そんなのが混ざった匂い。

 夫の横顔とか夫のシルエットに慣れてた私には、彼の細い首のラインとか、肩の繊細さが痛かった。

 この子は若い・・・。

 ダメだ・・・。

 こんな若い男の子とこんな事しちゃいけない・・・。

 私は自分の気持ちにブレーキをかけた。

「あの・・・、あたし、結婚してるの・・・。」

 しばらくの沈黙が流れる。

 ああ・・・、やっぱりもうおしまい。

 結婚なんてしてる女なんて無理だ・・・。

 クラウディオが鳴いた。

「俺、そんなの気にしませんから。

 図々しいと思われるかもしれないけど、俺はあなたが結婚してても好きな気持ちは変わらないんで・・・。

 あの・・・、俺の彼女になってって言ったら嫌ですか?」

 どうしょう・・・。

 私の胸は高まってた。

 誰かにそばにいて欲しがった。

 死にたいくらいに辛い毎日、いつ壊れても可笑しくない毎日。

 死ぬことばかりを考えてる毎日・・・。

 もうダメだ・・・。

 私は彼の目を見つめる。

 キラキラして綺麗な瞳・・・。

 まだまだ少年で可愛い男の子にしか見えない。

 この子に私はだんだん惹かれ初めている。

 私には何もない・・・。

 信じるものも何もない・・・。

 もうどうなってもいい・・・。

 そう思った瞬間、私はうなずいてた。

 素直な気持ちで・・・。

 そこには何の打算ない。

 私にはもう彼しか見えなくなっていた・・・。
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