世界の終わりに隣に君がいてくれたらそれだけでいい…
 祖母は、

「あー、なんだか疲れちゃったから、もう寝ようかしらね。

 今日、露天風呂に入って来たんだよー。

 気持ちよかったわよー。」

「ご飯は?」

「ああ、いらない。」

 祖母はそう言うと、そそくさと部屋に入って行った。

 どうしょう・・・。

 テーブルの上にある寿司を見る。

 今晩、カレーのつもりだったのに・・・。

 私はさっき急いで作ったカレーを冷凍した。

 一晩置いた方が美味しいって言うし・・・、いいよね・・・。

 私は、台所を出るとすっかり暗くなった公園を1人で歩いた。

 レイの事を思い出しながら・・・、歩いてると携帯が鳴り、夫からのメールだった

《9時には着くから》

 別にどうでもいい・・・。

 空を見上げる丸い月が眩しかった。

 今日は満月なんだあ・・・。

 昼間と違って夜に吹く風は、なんだか切ない・・・。

 よくわからない寂しさを感じる。

 私は家に戻ると風呂に入り、レイに抱かれた体を何度も洗い流した。

 夫の事などこれっぽっちも愛してなんかいない・・・。

 でも、さすがにだからって違う男に抱かれたまま、会うほど私は腐りきってはいない。

 レイの存在を消して私は何事もない顔をして夫に会わなければならないのだ・・・。

 それは最低限の思いやりだと思ったから・・・。

 都合のいい言い訳だとしても、絶対に相手に知られたらいけないって思うから。

 夜9時を回ると少し遅れて夫がやって来た。

「久しぶり元気だった?」

 いきなりの言葉に苛立つ。

 これが夫婦の会話と言えるのか?

「まあ普通・・・。」

 私はそう返事した。

 私の部屋で2人で何をするわけでもなく、ただTVをだらだらと見ていた。

 別に凄く興味をそそられる番組なわけではないけど、私達2人には、もう会話さえないから。

 ただのBGMがわりにTVを流すしかない。

 じゃないと、いたたまれない雰囲気になるから・・・。

 私はだんだん眠くなり、

「ねぇ、もう眠いから・・・。」

そう言ってベッドに入った。

 夫の布団は隣の座敷に敷いておいた。

 私はそのまま眠ってしまった・・・。

「ニャアーー、ニャアーー、ニャアーー。」

 その鳴き声で目が覚めた。

 時計は12時を周った所だった。
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