世界の終わりに隣に君がいてくれたらそれだけでいい…
第2話 エアー
 私には両親がいない。

 幼い頃に父母を亡くしてから、ずっと祖母と2人暮らしだったから、結婚してからは週末に祖母の様子を見に帰ってたりしはいてたけど、そんなに頻繁に実家に帰ることがなかった。

 久しぶりに自分の生まれ育った家に戻り、幼い頃から慣れ親しんだ風景に癒されながら、私の精神はほんの少しずつであったけど落ち着いてきたかのように思えた。

 しかし、自由にならない足を引きずりながらの歩行は、心に深い傷を残し散歩とリハビリをかねてのトレーニングも途中からはまったくやる気になれず、家の縁側でぼっとしてる日々が続くようになっていた・・・。

 実家には2匹の猫がいて、1匹がクラウディオ(オス)もう1匹がルルドマリア(オス)で、2匹とも、とても人懐こい猫で、神社で知らない人に可愛がられたりしていた。

 うちの縁側からはすぐ海が広がっている。

 そして神社もすぐそばにある。

 景色が綺麗だし癒される事から、私は縁側に座って本を読んだり、ただぼんやりと移り行く景色を見ていたりしてた。

 歩く事には関心がなくなり、このままどうなってもいいって思っていた。

 そして、毎日精神安定剤を服用し、どうしょうもなく襲う突然の恐怖感とか喪失感とかから逃げ出そうとしていた・・・。

 ゆっくりと流れる雲。

 時折みえる飛行機。

 そして臼水色の空・・・。

 風に揺れる木々の音。

 深呼吸したら透明な空気を吸い込んだような気がして少しだけリフレッシュできる。

 読みかけの本を読もうとページをめくった。

 その時・・・。

 神社の方から1人の少年が歩いて来るのが見えた。

 そして彼の腕には、うちのクラウディオがしっかりと抱かれてた。

 人と話すのが苦手になってた私は部屋に隠れようと立ち上がる。

 しかし足元が不安定な為にふらついた。

「大丈夫ですか?」

 私の腰を支えるその手が優しい。

 クラウディオが

「ニャー」

って鳴きながら少年のそばに寄り添う。

 私は縁側に座った。

 少年はクラウディオを膝にのせると、

「隣に座ってもいいですか?」

って言った。

 私はちょっぴり恥ずかしかった。

 久しぶりに男の子から声をかけられる事に対しての緊張と自分の足がこんな状態で その上、ジャージ姿でスッピ自分を見られるのがとても嫌だった。
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