世界の終わりに隣に君がいてくれたらそれだけでいい…
 私は素っ気なく、首を縦にふる。

 少年は私の隣に座る。

 クラウディオがお腹を見せていた。

 猫がお腹を見せるなんてよほど心を許さない限りあり得ない。

 クラウディオはこの少年にすっかりなついていた。

 木々の揺れる音・・・。

 心地よい風の匂い・・・。

 海から吹く風の匂い。

 私は目を閉じた。

「あの・・・」

 少年は私に話しかけてきた。

「あの・・・、俺、あなたの事、最近よく見てて、実はあなたの事、一目惚れってゆうか好きになっちゃって・・・。

 すみません。

 いきなり変な事言っちゃってごめんなさい・・・。」

 私はあまりに唐突な言葉にびっくりして、

「私をからかってるの?

 私なんて足がこんなだし全然ダメだよ。

 好きになってもらえるわけないよ。

 誰かと勘違いしてるんじゃない?」

 クラウディオが私の膝に飛び乗った。

 ザワッと木々が揺れた。

 木々の間からキラキラ差し込む日差しが眩しくて目を伏せる。

「やっぱ信じてもらえないっすよね?

 でもマジっすから。

 俺、ずっとあなたの事見てました。

 最近学校止めちゃって、家も色々問題あって、行くとこなくて神社でひまつぶしで来たら、猫がいて・・・。

 俺、動物好きだし、猫と遊んでたりしてたらあなたを見て、

 あの・・・、好きです。」

 少年はスリムで幼くて男の子って感じで綺麗な横顔をしてて、なんだか不思議と私の目から涙が出た。

 私なんて全然ダメ。

 交通事故に遭って足が不自由だし、もうおしまいよ・・・。

 だんだん気持ちが高揚し、押さえきれなくなった私は少年の左肩に頭を寄せた。

「ごめんね・・・。

 色々思い出しちゃって辛くなっちゃったみたい・・・。

 ごめんね。

 ちょっとだけこのままでいていい・・・。」

 私は目を瞑る。

 その時・・・、柔らかな感触に閉じた目が開いた。

 私の唇に彼の唇が重なっていた。

「ごめんなさい・・・。

 ごめんなさい・・・。」

 そう言って何度も彼は私に謝る。

 「あの・・・、俺じゃダメですか?

 あなたの事を支えたいって思ったんですけど・・・。

 俺じゃダメですか?」

 彼は真剣な目で私を見る。
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