そうだ、異世界へ行こう
『あー、そうだな
もうそろそろ会う時間だ
時間取らせて悪かったな、行くぞ穂波』
「え?ちょっと、もう終わり!?
…ご迷惑おかけしましたー!」
ずるずると刹那に引っ張られながら
名残惜しくも後ろをちらりと振り向くと
赤と青のコントラストが素敵な麗しき二人が笑みを浮かべて手を振っていた
なんだか、理想の夫婦像に出会ったような…
…って、わー!わー!わー!
脳内妄想やめっ!決して刹那があんなふうに柔らかく笑うところとか想像して無いんだから!あんな穏やかで優しい刹那なんて刹那じゃないんだから!
ぶんぶんと頭を振って残像を振り払っていると
『…お前、何やってんの』
ゴミを見るような目で刹那に見られた
「な、なにも…」
『ふーん、ま、いつもの事か』
ああ、神様仏様魔王様
刹那がイオンさんのような大人の素敵な男性になる日は来るのでしょうか…?
「…絶対来ないな」
『…お前の脳内劇場の内容は知らねぇが
なんか酷くムカつく内容な気がする』
『セツ、丁度いいな』
急に横から声が聞こえて振り向くと
もう街中に入っていて
オープンカフェのテラスにある椅子に腰掛けている男の人が刹那に声をかけたようだと判断した
『ジンラじゃねえか、予定の時間より早くねえか?』
『まあな、ちょっと誰かさんのせいで予定を変更せざるを得なかったからな』
『ジン、そんな事言わないの
…お久しぶりです、セツナ様』
男の人の陰に隠れていて見えなかったけれど
私達と同じ年頃の女の人が微笑みをたたえて刹那に挨拶をした
男の人は真っ黒な髪に金の瞳
女の私が羨むようなキューティクルが太陽の下で銀に輝いているが
どうもこの人には昼よりも夜の方が似合う気がしてならない
対する女の人は金色の髪に茶色の瞳の太陽のような色みの人で
男の人と対なのかと思うぐらいにお似合いだ