そうだ、異世界へ行こう
『その…だな、お前の国だとまだ早いとか言われる年齢なんだろうけど
向こうではこのぐらいで子供がいるのだって当たり前なんだよ
継承権を渡してきたと言っても直系の子になるわけだし
そろそろ考えろって帰るたびに言われてんだよ』
これって…もしかして?
『でもお前向こうで暮らしたいだろ?
まだ従兄弟に決まった相手はいないし、俺が頼りにされてる所もある
だから無理矢理お前をこっちの世界に縛り付けたくなくていえなかった…くそっ
こんな言葉上手く言えるわけねーよ!』
この二人っきりの旅行も
いろんな人たちに会わせてくれたのも
さっきの言葉も
『少しは俺の住んでる世界を知って欲しかったんだけど
最初から行くのは気が引ける場所だろうなと思ったから知り合いも多いここにしたんだけど…
やっぱり、すぐにとは言わないから
俺らのこと考えて欲し…』
刹那の言葉は最後まで聞こえなかった
私がその胸に向かって飛び込んでいったから
「馬鹿ぁ!私がずっと刹那の住んでる別の世界を考えなかったとでも思ってるわけ!?
時間の感覚が違うんだったらなおさらそばに居たい
家族や友達と同じように年を取りたいけど、それ以上に刹那と同じ時間に生きられないのが悲しくなるの!
…とっくに覚悟なんて付いてるわよ!根性なし!」
えぐえぐと泣きはらした顔は最高に不細工だろう
でも、いいの
それを見て『酷い顔だな』って穏やかに笑ってくれる人が近くにいるんだから
『穂波、俺と一緒に生きてくれ』
まだ不安そうな色を瞳に浮かべながら、それでも余裕を持ってるように見せたがるこの悪魔様と
「当たり前じゃない、喜んで」
これからどんな未来が待っているのだろうか?
『魔国の王子じゃなくて、ただの刹那を見てくれる穂波に逢えてよかった』
「え…あれ?
…刹那って王子だったの?」
『え?…言ってなかったっけ?
だからさっきから王位継承権が問題で…って言ってたじゃねぇか』
「そんな現代日本に生きる女子大生にケーショウケンなんて難しい話題出されたって分かるわけ無いでしょ!」
『お前覚悟出来てるって…何の覚悟だったんだよ!』
「少なくとも王子のお嫁さんなんて無理だ」
『てめぇ…』
ま、たぶん
今とそんなに変わらないんだろうなぁ
END