そうだ、異世界へ行こう
「えー、だって
せっかく貴重な体験が出来てるのに、自分から動かないのはもったいないでしょ?」
我が家のモットーは『動いて後悔しろ』だからねぇー
自分のやりたい事をやりたいだけやろうと思ってるだけだよ
あー、そんな事考えてたらお腹減ってきた
「刹那ー、まずご飯食べない?お腹減っちゃった」
『はいはい、どうせ穂波の事だからあっちの世界では食べられない変わったものが食べたいって言うんでしょ?』
そう言って私の手を優しく握ってくる刹那
日本だと恥ずかしいから駄目っていつも言ってるけど…今日ぐらいはいっか
私が少し顔を染めているのを見てか
刹那は優しげに笑った
…意地悪ばっかり言う刹那だけど
不意に見せるこんな優しい顔がとても好きだ
「さすが刹那、よく分かってる~!」
そんな恥ずかしい事考えてるって悟られたくなくて
私はいつもよりはしゃいだ声を出した
こっちの世界の人を見ていると
まず髪の色が豊富にあるみたい
私たちみたいな黒や茶色、金はもちろん
燃え盛るような赤毛、絹のような銀、ここの海のような青もあった
どうやらこちらの世界では魔法が日常的に使われているらしく
(これを聞いたときものすごく興奮した)
その属性によって髪の色が違うのだとか
それを説明するのに一番手っ取り早いのが
この辺りで一番大きなカトレア帝国の4王子ってのらしくて
長男が赤、次男が青、三男が黒、四男が金らしい
…遺伝の法則を完璧に無視してるっっ
私の習ってきた常識が崩れる瞬間をこの年にして何度も味わうとは…
そして魔法で何でも出来ちゃうから科学は余り発達していないらしく
見かけは18世紀とかそんなイメージの町並みだ
一番よかったのは、服がたいしてここの人たちと違わなくて浮いていない事だったけど
見た目がヨーロッパだからドレスとか日常的に着てたらどうしようとか思ったんだよね
それを刹那に言ったら
『こんなクソ暑い国でドレスなんか頻繁に着ねぇよ』と言われてしまった
うーん、一理ある
ものめずらしさもあって、きょろきょろしながら街の中を歩いていた
気分は完璧おのぼりさんだ