花咲く原石

1章 旅立ち

01．別れ

「時間だ、母なる神が私を呼んでいる。」




そう言って彼は最後だという思いを込めて彼女の肩に手を乗せた。

「繋げ、シイラ。それで前を向けるなら繋ぎ育てていくんだ。」

穏やかな表情の彼とは反対にシイラの目には涙が溢れ、今にも崩れそうな儚さがあった。

静かに首を横に降る彼女に彼は微笑むことしかしない。

いや、出来ない。

「ダイドン。」

すがるように名前を呼ばれても、もうどうしようもないのだ。

「ダイドン！」

どんなに切ない声をあげても、どうしようもないことはシイラにも分かっていた。

やりきれない思いを抑えるようにダイドンの首に手を伸ばして抱きしめる。

今ここにいることが幻でないように願いながら、必死だったのかもしれない。

彼女の力は強かった。

「シイラ。泣くもんじゃない、別れは誰にでも等しく訪れるものだ。」