花咲く原石
リトの気遣いが有り難くて思わず顔がほころんだ。

「食事もすぐにご用意します。どうぞ楽にしてくださいね。」

案内役の女性の笑顔も温かい。

ぼおっとしながらシイラが進んだ方とは違う側のスペースにオーハルは荷物を置いた。

物珍しそうに室内を見回すシイラを見て、とりあえず安堵のため息を漏らす。

さっきまでの嫌な空気はとりあえず無くなったようだ。

オーハルがそう考えていることなど知らないシイラは興味津々で室内の装飾を眺めている。

「オーハル、見て！このタペストリーの模様綺麗だね。」

「ええ。色使いも美しいですね。」

「ダイドンにも見せてあげたかったな。」

シイラの声にオーハルは返す言葉が見つからなかった。

彼女はその言葉に反して穏やかな表情を見せている。

もう、深い悲しみからは抜け出せたのだろうか。

そうしている間にも食事は着々と準備され、シイラたちは座るように促された。

「美味しい。」

「料理番自慢のスープです。おかわりもありますので遠慮なく召し上がって下さい。」



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